QDパワー、全固体蓄電設備商用化

蓄電池ベンチャーのQDパワーはこのほど、系統用蓄電所向けに全固体リチウムイオン蓄電設備を製品化すると発表した。7月に工場を操業し、10月以降出荷する計画だ。(本誌・岡田浩一)

廿日市市の蓄電設備工場

不燃性の固体電解質を用いた全固体リチウムイオン蓄電池の開発が進むなか、2024年5月、蓄電設備製造のQDパワー(広島県広島市、寺田典広社長)が全固体蓄電池を用いた蓄電設備の製造・販売を始めると発表した。中・アンパワーの蓄電池モジュールを調達し、蓄電容量数百kWh~数千kWhの蓄電設備を製品化する。蓄電用PCS(パワーコンディショナ)や監視装置、蓄電池モジュールへの充放電を制御する整流装置なども調達、蓄電設備に組み上げて販売する。蓄電設備の管理・保守まで請け負う方針だ。

QDパワーの川本忠取締役会長は、「アンパワーは18年に全固体蓄電池の販売を始め、出荷実績がある」としたうえで、「当社の製品は、安全性が高いうえ、抵抗値が低いため、充放電ロスが少なく、寿命が長い。最低でも1.1万サイクルの充放電が可能だ。受注生産方式で販売していく」と語る。

同社は、全固体蓄電池を開発するソリッドバッテリー(東京都港区、鈴木修一社長)および、電子機器製造のサンエス(広島県福山市、佐藤卓己社長)と事業を展開していく。ソリッドバッテリーは日本におけるアンパワー製蓄電池の使用権を持ち、15年に全固体蓄電池の開発に着手した企業で、今回は蓄電設備の開発を担う。サンエスは電子技術でQDパワーの製造を支援する。

3社は6月4日、広島県廿日市市の蓄電設備工場で技術発表会を行った。QDパワーの蓄電設備を評価する大和製罐の有馬理仁氏による技術セミナーや、電力コンサルのアンプレナジーの村谷敬社長によるビジネスセミナーを開催した。

技術発表会には200名を超える業界関係者が参加した

課題はコスト低減か

ただ全固体蓄電設備の普及拡大には相応の時間がかかりそうだ。QDパワーの川本会長は、「全固体蓄電池用のケーブルの開発や蓄電池の評価技術のほか、制度も未整備な部分が多い」とし、「不燃性の全固体蓄電池にも、通常のリチウムイオン蓄電池と同基準の安全性が求められ、相応の筐体を用意しなければならない」という。

ある業界関係者は「現行のリチウムイオン蓄電池と比較すれば、コストは高い。まずは自治体などに向けた防災用途で導入されていくのではないか」と推測する。

ともあれ、安全性能の高い全固体蓄電池に対しては期待が大きい。日本ではNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、トヨタ自動車やGSユアサ、パナソニックホールディングスら〝オールジャパン〟体制で開発を進めている。今後の展開に注目だ。

蓄電設備の外観。写真は海外向け製品

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