まち未来製作所(横浜市)は8月4日、24/7カーボンフリー電力(24/7 CFE)の電力需給状況を第三者であるアグリゲーターがリアルタイムで監視・検証するトラッキング実証実験を開始すると発表した。需要・供給データの統合、タイムスタンプの整備、ダブルカウント防止の3つの課題に対応し、透明性の高い24/7 CFE電力供給モデルを確立する。
これまで再生可能エネルギー発電所の発電量と顧客の電力使用量に関する情報をリアルタイムに取得できるのは小売電気事業者だけだった。そのため、24/7 CFEサービスの提供者が契約当事者である小売電気事業者というガバナンス上欠陥のある仕組みとならざるを得なかった。
今回の実証では、まち未来製作所が電力流通のみを担うアグリゲーターの立場で、電力データ管理協会が提供する需要側電力データを活用して「需要・供給データの統合基盤」を構築する。電力データ管理協会は、2023年10月から需要側電力データを提供しているが、2025年3月から速報値連携機能の提供を開始。数時間のタイムラグはあるものの、リアルタイムでデータを確保できるようになった。
日本標準の環境証書であるトラッキング付き非化石証書にはタイムスタンプ(発電時間の情報)が付与されていないことから、国際認証制度であるI-RECを併用する。I-RECは、30分単位のタイムスタンプが付与されるほか発電所情報や燃料などの情報も管理し、トラッキング付き非化石証書と紐づけることができる。実証では、2つの証書を紐づける運用システムも検証する。
また、制度全体が独立した第三者によって運営されるI-RECを活用することで、ガバナンス上の偏りがなく発電と使用の対応関係を厳格に記録・追跡できる。その結果、環境価値の二重計上(ダブルカウント)などの不正リスクを回避し、国際的に信頼性の高いシステムになるという。
実証では、I-RECの設備登録が完了している風力・太陽光・水上メガソーラー(大規模太陽光発電所)の3発電所(合計出力約15MW)を想定し、需要家は高知県梼原町営雲の上の図書館、横浜港埠頭、NTT都市開発の東京都千代田区内ビル数件、個人宅数件になる。2025年度中に実証し、2026年度中にシステム構築、2027年度に実サービスを開始する予定。